岡山から一両編成の電車に揺られ、緑溢れるいくつかの谷を通り過ぎると、林野という小さな駅に辿り着く。駅からさらに車で少し移動し、山あいのスポーツ施設へ。そこでは小雨の中、岡山湯郷ベルの女子サッカー選手たちが練習に励んでいた。周囲は全くの静寂に包まれており、ただ選手たちのボールを呼ぶ声や、笑い声や叫び声だけが聞こえてくる。 早秋の夕暮れが迫ると、ピッチに残ったのは数人の選手のみとなり、彼女たちはセットプレーの練習に取り組み始めた。その中でも小柄な宮間あやの両足からは、ひときわ素晴らしいフリーキックが放たれていた。 私服姿の宮間と街中ですれ違ったとしても、彼女が世界女王であるなでしこジャパンのキャプテンだとは誰も気が付かないかもしれない。だが彼女が練習する姿を2時間ほど見ているだけでも、2年連続でアジア最高の女子選手に選ばれた理由がはっきりとうなずけるものだった。 「練習はすごく好きです。PKや