2009.09.06 柄谷行人、小林秀雄、あるいは「自分探し」という病について (2) カテゴリ:思想・理論 批評家の柄谷行人が、『探求II』 の中で次のようなことを書いている。 ところで、子供に死なれた親に対して、「また生めばいいじゃないか」 と慰めることはできないだろう。死んだのはこの子であって、子供一般ではないからだ。しかし、子供や妻が家畜と同じ財産と思われているような社会では、それが可能であるように見える。 たとえば、『ヨブ記』 では、神の試練に対して信仰を貫いたヨブは、最後に妻および同数の子供(男七人と女三人)とより多くの家畜を与えられる。しかし、どうしてそれで償われたといえるだろうか。死んだあの子が取り戻されたわけではないのだ。『ヨブ記』 を読んだ後に残る不条理感はそこにある。 『ヨブ記』 というのは、ヤーヴェなる全能の神と悪魔との人間の信仰心をめぐる賭けの対象に選ばれたヨブと