学術から文芸、ゴシップ、ジャーナルにカルチャーとあらゆる活字メディアを詰め込んだ、千代田区紀尾井町の文藝春秋の社屋、その8階に我らがNumber編集部はある。 出入り口から踏み入れると、そのすぐ横にホワイトボードがある。誰の目にもつくような大きなもので、そこには編集長以下、部員のネームプレートが貼ってあり、それぞれの名前の脇には「行き先」「帰社予定」が書ける欄が設けられている。 浜崎伝助、釣り、直帰。 映画『釣りバカ日誌』のハマちゃんならば、さしずめそう書いているであろう、あのボードだ。 そして、当編集部のそれには、なぜか長らくプロレスラー「飯伏幸太」の名札があり、彼の行き先については「プロレスを探す旅」とだけ書かれてあった。 だからNumberに出入りする者はこの数年、意識するか、しないかに関わらず、視覚的、潜在的につねにこういう問いを刷り込まれることになった。 そういえば、彼はプロレス