やっと出たのでうれしい。これは、穂村弘が「群像」で長く連載している短歌の紹介をまとめた本である。 たぶん何千という単位でノートしてあるのだろう好きな歌・最近気になった歌の数々から、穂村弘は毎回、「高齢者を詠った歌」とか「天然的傑作」とか「素直な歌」のようにひとつのテーマを定め、それに沿った歌をいくつも取り出してきてそれぞれの魅力を語り、共通点と差異を説明して、そういった歌を発生させた背景を論じていく。 毎回のテーマ制、そして1回の分量も多くない(4、5ページ)ことから、これは『短歌の友人』(2008)のような、長めの論考を入念に準備して「戦後短歌とは」といった大問題への登攀を試みる本ではない。 それよりももっと、近所を散歩しながら目についた珍しい昆虫だったり、引っかかる表札だったりを次々に指さし教えてくれるような調子でこの本は進む。とても読みやすい。 だからといって軽いだけの本ではぜんぜん

