シリアの反体制地域で人命救助にあたる市民組織の民間防衛隊(ホワイト・ヘルメット=WH)について、「英国情報部のプロパガンダ」とか、「アルカイダの手先」などと貶める宣伝が激しい。そのプロパガンダの中には、欧米人のジャーナリストも加担し、国際的に広まり、日本人の間でも信じられているものさえある。そのプロパガンダの真偽について考える。 まず断っておくが、私はシリア内戦についてはアサド政権側とか反体制派とか、政治的な立場で内戦を見るのではなく、戦争の犠牲になる「市民の視点」で見るという立場である。反体制勢力によるアサド政権の打倒も、政権による反体制派の制圧も、それぞれの支配地域の市民をさらなる悲劇に追いやるだけで、問題の解決にはならないと考える。双方の市民が安心して暮らすことができる状況を回復するためには、15年間続いたレバノン内戦が90年に終結し、宗教・宗派間の権力分有のシステムが始まったように