【解題】 浅野いにおについては、04年度後期の立教の講義でも、今度の05年度前期の早稲田の講義でも扱った。若いし、短篇連作の各話に微妙な接合点をもつせる構成・話法が緻密だし、マンガ的な通常のデフォルメから果敢に離反を企てているし、人物の科白に「リアル」があるし・・・ ただ、原口くんのいうとおり、絶望と希望とを綯い交ぜにして提出してくる主題ににたぶん、時代の気分にかなったものがあるのだろう。のべたらな絶望も希望も、現在にあってはウソになる。それらのブレンド、その具合だけに、「リアル」に辿りつく何かが刻印される。その意味で浅野は非常に微妙な才能だし、それをこのむ読者も非常に微妙な感性だ--そういうことになるだろう。みんな冷めているけど、まだすべてを「捨ててはいない」のだ。 原口くんの感性が最も微妙な点は、浅野の人物たちの服装センスや睫毛を描写するくだりにあるとおもう。原口くんの視線は、浅野の画