『最後の大君』スコット・フィッツジェラルド 村上春樹/訳 中央公論新社 2024.05.23読了 実は未完の小説が苦手で(たいていの人がそうだろう)、それは物語の結末がわからないことに対する苛立ちなのか、どうにも消化できない心残りなのか。読み終えたあとに、自分の感情の持って行きどころがないからだろう。 と読み始める前は思っていたし、だからこそ発売してすぐ購入していたのに積読状態になっていたのだが、物語世界に入ると(なんなら作者の友人であり文芸評論家でもあるエドマンド・ウィルソンによる序文から既に)全く杞憂に終わり、優雅でいかにもアメリカ的な映画の世界に没頭できたのだった。 ハリウッドを舞台にした映画の世界。そんなバックグラウンドしか知らずに読み始めたから、最初に飛行機事故にあい語り手となるセシリアの物語かと勘違いしていた。モニカ・スターという映画プロデューサーが主役なのに途中から気づく。で
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