数学に「群論」と呼ばれる一大分野がある。対称性(何かが一連の変換を経た後にもとと同じに見えること)を数学的に探究する学問で,素粒子物理学はじめ多くの科学分野の基礎となっている。この宇宙に見られる対称性が4つのカテゴリーに分類されるとする「有限単純群の分類定理」は20世紀数学の金字塔で,その証明は数学史上で最も長大だ。100人以上の著者が数百の論文誌に部分部分を記述した多数の論文からなり,全体で1万5000ページにもなる。だが,このままでは専門家も全体を通読できない。そこで,証明をすっきりとまとめる作業が半ばまで進んできた。知の集積を次代に継承するための挑戦だ。 再録:別冊日経サイエンス266『数学の楽園 数独からトポロジー,圏論まで』 著者Stephen Ornes テネシー州ナッシュビルを拠点とするサイエンスライターで,数学からがん研究まで幅広いテーマについて執筆している。フランスの女性