「先生、認知症はどうやったらよくなるんでしょうか」 あるとき、なんとなく重い空気の中で相談を受けた。 病院の診察室ではなく、相馬市の井戸端長屋での一コマだ。 井戸端長屋というのは、東日本大震災で被災した高齢者のために相馬市が造成した公営住宅だ。 私は一ヶ月に一度、医師として健康相談を受けるために訪問している。[1] 長屋は5棟あり、それぞれに特色があるが、この日訪問していた長屋は、最も活気があるところの一つだ。 朝6時から住民全員でラジオ体操をする、年に数回は旅行へ行くなど積極的な住民活動が行われていた。 みんなで健康を維持しようと積極的に心がけているので、コミュニティ内で運動習慣が保たれるし、不安も軽減する。 毎月訪問していた私も、住民同士で支え合う「互助」とは、こういうことなのかと楽観的に考えていた。 しかしこの日、詳しく話を聞くと、入居者の1人が、「お金が盗られた」と騒いで困るという
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