ある国立大の偉い教授から南場よ出てこい、と名指しで呼び出しを受けた。ほんの数年前の話。研究室推薦で日本の大企業から内定をもらっていた学生が、それをキャンセルしてDeNAに行きたいと言っているとのこと。教授はカンカンに怒っていて、その大学には二度と足を踏み入れさせない、学生をいっさい採用できなくするというメールも来た。 その学生からも連絡が来た。本人はわりと落ち着いている様子だが、とにかく教授の剣幕は形容しがたいほどだと伝えて来た。学生本人にも怒っているが、矛先はむしろ我が社に向いているという。 教授と大企業のもちつもたれつの関係がある。企業は研究費を、教授は学生をたがいに提供し、何年ものあいだ、その約束を違えたことはない。有名大学の理系の研究室の常識だ。「南場さん、謝りに行きますか?」と採用責任者に聞かれた。とても心配そうだった。 えーっと何を謝るんだっけ。出かけて行って「先生、すみません