先日AASJの理事の一人藤本さんから「巷では、新型コロナウイルスが世界中に広がる間に感染力の高い突然変異が選択されている。」とか「わが国で発生した変異が第二波として広がりつつある。」という話を聞くが、それを裏付ける論文を紹介してほしいと頼まれた。 その時、このウイルスは他のRNAウイルスと比べると複製を正確に行う検閲機構を持っており、変異速度は比較的低いこと、また突然変異による系統樹は詳しく調べられており、ウイルスの広がりを予測するには極めて重要だが、それぞれの変異の機能的検証は極めて難しくほとんどできていないため、感染性の高いウイルスが選択されたなどといった話は全て推察で、エビデンスに基づく話はほとんどないと答えておいた。 幸い、今日紹介するワシントン大学からの論文はウイルスが細胞に侵入する際に使うスパイクタンパク質だけに焦点を当てた研究で、ウイルス全体の感染性を必ずしも反映するものでは