めまい症を患い、一時は五輪での活躍も危ぶまれたが、チームの中心として戻ってきた澤穂希。4年前の北京五輪、宮間あやに「苦しい時は、私の背中を見て」と声をかけたと言われるが、その姿勢は今も変わらない。 走る。 跳ぶ、投げる、泳ぐ、打つ、組む、射るなど、様々な動きを要求されるアスリートにとって、この動作は最もシンプルかつ基本的な身のこなしだろう。 数年前から日本でもランニング人口が増えており、アスリートでなくても「走る」ということが身近になっているが、世界中から一流アスリートが集うオリンピックの現場で取材をしていると、「RUN=走る」というシンプルな行為に隠された様々な意味が見えてきた。 今回、「走る」のが本分である陸上競技は取り上げていないが、これまでに目撃した3つの印象的なシーンから、改めて気づかされたその行為の奥深さを探ってみたい。 柔道57kg級の松本薫が鬼気迫る形相で見せた「走り」。