1.はじめに 昨年12月に、「和食」がユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録されました。 私個人は、この件に関して複雑な印象を抱いております。日本の食文化が世界的に評価されたことは喜ぶべきだと思いますが、この件が一部の偏狭な「和食原理主義者」や「食の排外主義者」に利用される可能性があるからです。 「和食」は「伝統的な日本の食文化」であると定義されていますが、これは非常に曖昧な定義です。「伝統」とは一体何でしょうか。「和食」は「伝統的」に世界に自慢できるほど豊かだったのでしょうか。今回は、「和食」と「伝統」の関係について、とある有毒植物を例として考えてみたいと思います。 2.ヒガンバナはどう利用されてきたか ヒガンバナは恐らく中国を原産地とする植物で、日本に人為的に導入されたとされています。水稲栽培の技術を有する人々の手で持ち込まれたのでしょう。水田の周りなどに群生しており