ですが、ぼくの関心はそこからほんの少しだけズレます。音楽とネットとの関係としてイメージされるそうした00年代以降の文化状況、言うなればMP3やiPodが普通のものとなったその状況の、少し前のことに関心があるのです。つまり、90年代の音楽とネットとの関係を調べています。 90年代の音楽とネット......もちろん違法なMP3の流通が問題化したのも90年代末だったし、音楽配信事業が最初に試みられたのも同時期でした。それらが議論の対象として重要なのは間違いないのですが、それは分岐点としての重要性です。ぼくが指しているのは、その分岐に至るまでのプロセス、いわゆるMP3以前の時代のことなのです。つまり、DTMがパソコンマニアの間で趣味の一つとしてもてはやされ、耳コピアレンジされたMIDIデータが大量にやり取りされ、MODやReal Audioといった(今からすると)珍しいフォーマットに注目が集まった