「辻井喬+堤清二回顧録」である『叙情と闘争』(中央公論新社)を、戦後の消費社会のキーパーソンの記録として読んでいくと、そこに渥美俊一と藤田田についての知らなかった事実が述べられていたので、驚いてしまった。 渥美は読売新聞の経済記者を経て、チェーンストア理論を信奉するペガサスクラブを主宰し、高度成長期における流通革命のイデオローグで、以前に紹介した『商業界』の倉本長治と並ぶ存在である。藤田はすでに鬼籍に入っているが、言うまでもなく日本マクドナルドの創業者で、その著作『ユダヤの商法』(KKベストセラーズ)は、若き起業家たちに大きな影響を与えていると思われる。 堤は戦後の商業改革について、渥美の『流通革命の真実』(ダイヤモンド社)にふれ、渥美と藤田は不可欠の人物で、二人を抜きにして日本の流通革命は語ることができないと述べていた。それに続けて、渥美の証言に基づき、二人が東大時代に新人会に属し、彼ら