建築計画学の教科書に必ず登場する用語に「食寝分離」があります。「食うところと寝るところを分けましょう」という意味合いのこの言葉。戦後日本の住宅計画を決定づける考え方へと発展していきました。 提唱者である西山夘三(1911-1994)は、後に、この「食寝分離」の考え方が「現状の分析からそこに隠されている法則性を発見し、これを創造的に適用しようとするリアリズムの展開」だったと回顧しています。 一方で、吉武泰水(1916-2003)は、西山の「食寝分離論」について「〈論〉であって、必ずしも正確な調査の結果ではない」と評しています。「西に西山、東に吉武」と呼ばれた二人の証言は矛盾しているようでいて、実はそうでもないように受け取れます。 なぜって、西山が語るアプローチ方法、「現状の分析からそこに隠されている法則性を発見し、これを創造的に適用」という表現のなかには幾重ものジャンプが許容されているのです