学校にはついぞ縁がなく、思い出すらほとんどない僕ですが、そんな中で唯一の恩師と呼べる若桑みどり先生が、先日亡くなられました。 はじめて先生の講義を受けたのは、大学1年生のころ。満員の教室で、中世のキリスト教絵画や静物画の裏に、どのような反キリスト教的、あるいは反政治的なメッセージが隠されているのかといった「イコノロジー(図像解釈学)」という学問を、具体的に絵画を分析しながら説明するその授業は、まるで推理小説かと思われるくらい魅力的でした。 課題のレポートは「文学作品や芸術作品における、地水火風の4元素について」。題材としてマンガを選んではいけないと言われたにも関わらず、僕はデビルマンを元ネタにして、妙に一生懸命レポートを書きました。 結果は「A」でした。 芸術の世界が面白いと思い、僕は経済学部だったにも関わらず、その後ずっと若桑先生の研究室に入り浸りました。イコノロジーだけではなく、中世絵