小柄な彼女がステージ上のピアノに触れた瞬間、息を吹き込まれた音があふれ出し、情熱的な演奏に見る者、聴く者は一気に引き込まれる――。世界を舞台に活躍するジャズピアニストの上原ひろみさん。幼き日に出会って魅せられたジャズの音色、世界的プレーヤーとの突然のセッション、「そのとき」を待って旅立ったアメリカでの日々を語る。(文・中津海麻子 写真・山田秀隆) 8歳でジャズと出会った ――ピアノを始めたきっかけは? 6歳のとき、母がピアノ教室に連れて行ってくれました。自分からやりたいと言ったわけではなく、習い事の一つとしてやらせてみようと母が考えたんだと思います。通い始めたときのことは記憶にないのですが、最初の発表会で「人前で演奏するのって楽しい」と感じたことは、鮮明に覚えています。緊張より楽しさの方が大きかったですね。 地元のピアノの先生と、ヤマハの音楽教室と、二つ通っていました。ピアノの先生がいろん