第32回 黒部川の“黒い泥”今年も32万m3排出 漁民が関西電力を提訴 文/藤田 香(日経エコロジー) 2008年8月18日 「連携排砂(はいさ)」という言葉をご存じだろうか。2つのダムが“連携”して土砂を吐き出すことだ。富山県の黒部川では、今年6~8月、連携排砂によってダム湖にたまった32万m3の黒い泥が流れ下った。 日本有数の清流・黒部川には、「クロヨン」こと黒部ダムの下流に、関西電力の出し平(だしだいら)ダムや国土交通省の宇奈月ダムがある。いずれも通常ゲートとは別に、土砂を吐き出す「排砂ゲート」を持つ。ダム湖に蓄積した土砂を排出すれば、貯水量が増えて発電能力が向上し、海岸浸食を抑制すると期待された。 ところが、2001年から出し平ダムと宇奈月ダムが連携排砂を始めたところ、ダム湖底でヘドロ化した土砂が下流や日本海に流れ込み(上)、漁業被害が深刻化した。同年、沿岸漁民17人とワカメ