羽生善治の将棋の凄さ~相手の全力を引き出して勝つ~この記事では、羽生善治の凄さについて解説する。2014年、史上初の3度目の名人返り咲きを果たした羽生善治。その将棋は「猛手」を中核としている。盤に座した羽生は猛獣となる。しかし、その獲物は敵でも勝利でもない。羽生が求め続けるものをガイドなりに解釈していく。 羽生は猛獣である。あえて言おう。盤に座した羽生を「勝負師」としてとらえては見間違う。トラが獲物に襲いかかる場面を「勝負」と呼ぶだろうか。それと同様に、81マスの密林を自分のテリトリーとし、襲いかかる猛獣なのだ。それは、もはや本能とも呼ぶべきものである。知性と論理の盤上に、野生の本能をかいま見せる羽生。前回(参考「羽生善治の将棋は何が凄いのか?」)は、その一端を紹介した。 相手十分での羽生 柔道の試合で、組み手の攻防が長々と続く光景をご覧になったことがあるだろうか。柔道家は、まず相手より有