その人は本当に「悪人」だったのか。 歴史上、こうした議論の対象になる人物がいる。そもそも歴史的な有名人の評価は、時の政権によって変わることがある。悪党が後世には英雄になるケースもあり、その逆もある。たとえば関ケ原の戦いで徳川家康に敗れた石田三成は、江戸時代以降は徳川家に反抗した悪役として描かれることもあったが、近年は知将としての能力を見直す声も出ている。 この点で英国でよく議論になるのが、イングランド王リチャード3世(1452~85年)だ。ヨーク家の出身で、ランカスター家のヘンリー・テューダーに敗れて戦死する。英国史上、戦場で命を落とした最後の国王でもある。 「彼の悪役イメージを決定づけたのは、文豪シェークスピアが書いた『リチャード3世』です」。そう話すのは、歴史家で作家のマシュー・ルイス氏(47)だ。悪人説を検証する歴史調査団体「リチャード3世協会」の会長も務めている。 この戯曲の中でリ