もう寝るから、と寝室に上がった母。 しばらくしてそこからテレビの音が聞こえてくる。 しかも階下まで響くような大音量だ。 心配になり私は階段を上る。 「入るよ」「うん」 襖を開けると母は布団に横たわりバラエティ番組を見ている。 「ちょっとテレビの音大きいんじゃない?」「そう?」 といってボリュームを下げる様子もない。 横にはまだ父の布団が並べて敷かれたままだった。 私はリモコンを手に取りボリュームを下げる。それは最大レベルに近かった。 「これくらいだと聴こえない?」「聴こえる」「そう。あんな大きいと近所迷惑だよ」「わかった」 さっきまであんなに饒舌に話していた母が、また昼間のように戻ってしまった。 打っても響かないというか、普通だったらこのような会話の中で「何故音量が大きかったのか」を説明する場面だ。 実際、母は耳は遠くないので恐らく寂しさを紛らすためだったのだと思う。 母の性格からして私に