とんでもない傑作中の傑作でした。ひとつの家族の崩壊とその先にある光のようなかすかな何かを描いた作品です。「今までと違う」なんて語られたりしますが、もうまごうことなき黒沢清監督作品で、ぜひ劇場で確認してほしいのですが、タイトルバックが出現する演出からして度肝を抜かれました。格がぜんぜん違う。僕はこの前、映画にはリアリティが必要だと書きましたが、その認識を改めないといけないと思った。この映画はあえてリアリティを放棄しても、デフォルメして、この世の冷酷さを突き詰めます。本当の意味でファンタジーとはこのことじゃないかとすら思った。どうしても一般には、軽く受け取られがちなホラー映画ですが、考えてみれば、黒沢清監督はいつだって、そうして映画を作ってきたのでした。その軸はまったくぶれずに、そして過去最高クラスの丁寧な筆で、ただそのベクトルを変えて今回は家族のドラマを描いています。家族のみんながそれぞれに