少し前のことだけれども、夫が結婚指輪をなくした。悲痛な声で謝られたけれども、案外なにも思わなかった。有り体にいえば、モノはモノでしかない。 しかし、わたしの手元に残った片割れは、所在無げな、ただの指輪になってしまった。対で存在することで、ようやく意味が生まれていたのを、それで初めて知った。案外、ナットとボルトのような関係だったのだ。 その指輪は、左手の薬指以外にするには、あまりに野暮ったい。すきな色と形を選んだはずなのに、あまりに結婚指輪らしすぎた。どうしたものだろう。 少し違う話だけれども、「離婚式」がはやっているらしい。 いつかの日のパーティのように友人たちを集めて、宴会をし、そして最後に、指輪を二人で割るのだそうだ。聞いた話で、きちんと調べたわけでもないから、そんなものがあるのかないのかもわからないけれど、「指輪」は現代でも、夫婦のつながりの象徴らしい。 話を戻すと、一生懸命探したか
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