花村萬月(作家)×池上冬樹(文芸評論家) 対談 「本を読むより体験すること。プロになりたいのなら、脳に負荷をかける読書を」 第36回は芥川賞作家の花村萬月さん(聞き手は文芸評論家の池上冬樹さん)。心に残る作品を書くため必要なもの、デビュー前に行った“実験”、新人賞応募作に散見される“禁じ手”などについて幅広く語っていただきました。 ●記憶に残らない作品/見るのは独自性/“冷徹な技術を用いて複雑な情動を描く”―― 講座のテキストを4本読んでみて、感想はどうですか。花村 予想どおりで、こういう感じだろうなと思っていたとおりです。読んで数日たつと綺麗に忘れてしまう──ということです。申し訳ありませんが、講座のときも、壇上にあがって、テキストに俺自身が書きこんだその作品の粗筋やポイントを一瞥するまでは、どういう話だったのか思い出すことができませんでした。失礼な言い方になりますが「まったく心に残らな