「石川直宏こそ、積み上げ以外の何ものでもないよね」 今年の冬、長澤徹FC東京U−15深川監督に、こう言われたことを覚えている。 長澤が見つめてきた選手は、10代からスターダムにのし上がるスタープレーヤーとは対極的な苦労人ばかりだ。加地亮(G大阪)、福田健二(イオニコス)、呉章銀(蔚山現代)、マルセロ・マトス(パナシナイコス)、宇留野純(熊本)、古橋達弥(山形)……。石川も早くから年代別代表に名を連ねてはいたが、A代表選考レースからは早々に外れ、そればかりか、所属のFC東京でもベンチ外の危機を味わい続けてきた。 「10年続けなければプロとは言えない。続かなかったらアルバイトだ」 それは長澤の口癖であり、石川もさんざん聞かされてきたことだ。 その石川がプロデビュー10年目の今年、J1ゴールランキングの日本人トップ(8ゴール=7月1日現在)に立ち、脚光を浴びている。これを積み上げの結果