精度保証付き数値計算の理論とツール 大石進一 (早稲田大学理工学術院教授) 精度保証付き数値計算の理論とツールについて論じていきます。 理論としては数値線形代数の高速精度保証、線形計画問題、非線形方程式の解法、関数方程式、計算機援用証明などから話題を選んで解説する。ツールについては既存の商用ツール(MATLAB)、フリーのツール(Scilab)、自作のツール(SLAB)について議論する。 第一章 精度保証付き数値計算のための予備知識 精度保証付き数値計算が実用化されつつある。その基礎として最も重要なものは、倍精度浮動小数点数の規格IEEE754である。これは1985年にKahanという優れた数値計算の学者が中心となって制定したものである。IEEEは米国の電子工学会であるが、規格の制定も行っている。まず、IEEE754の規格を読むことから始めよう。 浮動小数点数の標準 IEEE754規格 浮