来年から導入される予定であった「大学入学共通テスト」においての英語の民間試験の活用はとりあえずは延期ということになった。中止ではなくあくまで「延期」であり、一安心とはとてもいえないが、最低限のハードルを越えることはできた。 僕は受験生ではないし、教員でも受験産業の一員でもなく、親族が、あるいは親しい友人の子どもが近いうちに大学受験をする予定もない。ではなぜ僕がこの問題にこだわりを持つのかといえば、日本社会の現状を象徴するものであるように思えるからだ。 「劣化」という言葉自体が好きではないが、これがましてやエリートの、政治の、官僚の劣化という使われ方をされるのには要注意である。「劣化」ということは元は優れていたものが衰えたということになる。日本のエリートは、政治は、官僚は、かつてほんとうにそれほど優れていたのだろうか。悪しき点が可視化されただけなのではないか。いたずらにノスタルジーをかきたて