フランスの片田舎に住む20歳の青年ヴァンサンは交通事故で重症を負い、9カ月の昏睡状態に陥った。意識が回復した時、彼の全身は麻痺し、唯一、親指だけがわずかに動いた。ヴァンサンは親指を使って、愛する母親と会話を交わすようになった。彼が望んだのは、この悪夢のような人生を終わらせることだった。 ヴァンサンは、3つの計画を立てた。計画Aは、シラク大統領に手紙を書き、死ぬ権利を与えてもらうことだった。大統領はその手紙に心を動かされ、ヴァンサンの病室に自ら電話をかけた。だがフランス大統領には、彼の希望を叶える権限はなかった。 計画Bは、安楽死を合法化したオランダへ行くことだった。フランスのメディアは、ヴァンサンの大統領への手紙を大きく報じていた。彼は、その計画を実行するにはあまりに有名になり過ぎていた。 2003年9月24日、計画Cが実行された。ヴァンサンは、「事故後の人生で最高の日」と母親に伝えた。母