安全配慮義務法理が確立された事件である。 自動車整備作業中に車両に轢かれて死亡した自衛隊員A(昭和40年7月死亡)の遺族が原告となり、昭和44年10月に自賠法3条に基づいて国を訴えた事件である。第一審(東京地方裁判所)は、事故発生から3年以上経過しており、時効が完成していることを理由に請求を棄却した。そこで、原告は第二審(東京高等裁判所)において、Aと被告国との雇用関係に着目し、「被控訴人(国)は自衛隊員の使用主として、隊員が服務するについてその生命に危険が生じないように注意し、人的物的環境を整備すべき義務を負担している・・・(中略)・・・隊員の安全管理に万全を期すべきところ、右義務を怠り、本件事故を発生させたのであるから、これに基く損害を賠償すべき責任がある」との主張を追加した。これは、本事故を時効3年の不法行為債権ではなく、雇用契約上の債務不履行(時効10年)として構成することによって