7月に最新刊『少女ABCDEFGHIJKLMN』が発売され、詩集『夜空はいつでも最高密度の青色だ』の実写映画化が決定した最果タヒさん。詩集、小説を立て続けに発表する話題の著者は、何を読んでいるのでしょうか? 夏休みの記憶が鮮明に甦る読書日記です。 いつのまにかセミが鳴いている。夏はいつだって過去を思い出す起爆剤でしかなくて、私は小学生だったころの自分のことを毎日、太陽の下に立つたびに思い出す。思うに、夏は過去についての後悔、冬は未来への不安が似合う。といっても大した失敗が私の夏にあったわけでもなくて、ただもう通うことのない小学校のプールや夏期講習、今思えば美味しいとは到底思えないアイスクリームのことを思い出し、何かを喪失したように錯覚するだけだった。ただ、通り過ぎてきただけだというのに。 夏休みに出された読書感想文には毎年毎年うんざりで、なにが嫌って、読む本は渡されたリストから選ばなければ