性虐待を告発されたのは“信頼できる友だち”だった 初めて聞いたときは信じられなかった。ラリー・ナサールが、あの有名なオリンピック・ドクターが、年端もいかない女の子たちに、自分の上位の力関係を悪用して、下位の者を性的に侵害する行為である性虐待を働いていたとして告発された。なんのこと? と二人とも思った。ラリーが? まさか。 とってもいい人だった。話を聞いてくれる、やさしくしてくれる、こっそりグラノーラ・バーやらのおやつを手にすべりこませてくれる人。体操の世界の、あの人を人とも思わないような指導と訓練のさなかで、ラリーは私たちにとって信頼できる友だちだった。 私たちは、ラリーが自分たちにも性虐待していたということが、すぐにはピンとこなかった。のみこむまでに時間がかかった。大人になってから、子どものころに虐待に遭っていたとわかるのは、変な気持ちだった。ましてそれが、自分のことを一番に考えてくれる