(注)某出版社の上記事典のために執筆したのだが、何年待っても出ないので、ここに掲載する。 地上世界(葦原中国)を統一した大国主という神は多くの異名を持ち、その一つを八千矛神というが、この神は、正妻スセリビメの嫉妬があまりに烈しいのに嫌気がさし、出雲から倭に逃げ出そうとする。その旅装束を整える歌謡に、まず「ぬばたまの黒き御衣」を身につけるが似合わないので投げ捨て、次に着た「そに鳥の青き御衣」も投げ捨て、最後に、山の畑に蒔いた「茜」を搗いて作った染汁で染めた衣を身につけたと歌われている。 妻の元から逃げようとする八千矛神が、黒→青→茜 と衣を着替え、もっとも目立つ茜色(赤)を選んで悦に入っているといった場面であるが、嫉妬深い妻から逃げようとする男神の心情(実は八千矛神は妻をちょっと脅しているだけだが)が、暗い色から明るい色への衣の色の交換によって効果的に表現されている。 1.日本神話に現