生身の身体とテクノロジー、そして、私たちを覚醒させる“痛み” 奇しくも時期を同じくして公開されるデヴィッド・クローネンバーグ監督の『コズモポリス』とレオス・カラックス監督の『ホーリー・モーターズ』には、注目すべき共通点がある。二本の映画では、それぞれにニューヨークとパリを舞台に、白塗りのリムジンに乗った男、というよりもある意味でリムジンと一体化した男の一日が描かれる。 ドン・デリーロの同名小説を映画化した『コズモポリス』に登場する28歳のエリック・パッカーは、投資会社を経営する大富豪で、そこがオフィスであるかのように巨大なハイテクリムジンから莫大なマネーを動かしている。そんな彼はなぜか2マイル先にある床屋を目指し、破滅へと引き寄せられていく。 一方、カラックスにとって13年ぶりの新作長編となる『ホーリー・モーターズ』の主人公オスカーの仕事は少々謎めいて見える。彼が乗るリムジンの座席にはその