京都市伏見区の「京都アニメーション」(京アニ)第1スタジオの放火殺人事件で、遺体の身元鑑定に取り組んだ京都府歯科医師会(中京区)専務理事の岡本肇さん(65)が京都新聞社の取材に応じた。事件当日に8人の歯科医が動員されたが、半数は鑑定の経験がなかったという。岡本さんは「凄惨(せいさん)な現場だったが、家族に正確に遺体をお返しするという使命を果たそうと必死だった」と、涙ぐみながら振り返った。 【図解】2階で見つかった犠牲者の位置とベランダへの避難行動 ■2日がかり 感情抑え、向き合った 府警から府歯科医師会に派遣要請があったのは、発生当日の昨年7月18日の午後5時ごろ。「警察歯科医」という制度があり、警察から依頼を受けた歯科医は虫歯の治療痕や歯並びで身元を識別する。ただ依頼は年間10~20件程度といい、ほとんどの歯科医は経験が乏しいという。 岡本さんは出火当時、開業する歯科医院で診療していたが