多様な文化で自立した個人育てる あるとき、堤清二さんは自分が経営する西武百貨店の書籍売り場に足を運んだ。友人の安部公房の小説『燃えつきた地図』が刊行されたというので探しにいったのだ。店員に尋ねると、案内されたのは文芸書ではなく地図の売り場だった。これではいけない、もっとちゃんとした書店をつくらねば、と堤さんは思ったという。今や全国チェーンとなった書店、リブロの始まりだった。 1970年代から90年代にかけて、堤さんがやろうとしたことの一つは、消費と文化の融合だった。消費としての文化、文化としての消費。あるいは、消費の文化化、文化の消費化。 たとえば、デパートの中に美術館をつくり、世界の最先端の芸術を紹介した。とくに20世紀の芸術に力を入れた。集客や入場料収入が目的ではなかった。たんにお客を集めるだけだったら、もっと知名度のある作家を選んだだろう。しかし堤さんは、すでに権威のあるもの、評価の