それは結婚以来ずっとそうで、だが第三者を含む場合は違う。 妻は僕のことをちゃんと下の名で呼び、しかし二人だけに戻ると再び僕のことを名字+くん付けで呼ぶ。 結婚二年目なのに。 最近、ようやくそのことを思い切って尋ねた。 「なあ、どうして僕のことを名字で呼ぶんだ。それも”くん”付きで」 そう言うと彼女は目を逸らし、「それは…」と言い淀んだ。 僕は引かなかった。急かすこともなく、話題を逸らすこともなく、妻の回答を待った。 妻は根負けしたように「学生のときみたいで、なんかいいじゃん」と言った。 は?と思った。 「なんだよそれ」と思わず口に出して言うと妻は拗ねたように「ふーん」と言った。 訳が分からず、冗談で今度は僕の方から妻のことを名字で呼んでみた。 「ねぇ、〇〇(妻の旧姓)どういうことなんだ?」 彼女は僕に窄んだ目を向けてきた。 その瞬間、僕はハッとした。 それは自分の思い出と重なる映画のワンシ