ついにコーヒーミルを買ってしまった。ブラックコーヒーが飲めるようになったのは高校生のとき。それから何十年経ったことだろう。美術の先生のおかげでブラックコーヒーのおいしさを知った。実家ではコーヒーを飲む習慣があって、手軽に飲めるインスタントコーヒーはもちろん、レギュラーコーヒーもドリップしてよく飲んでいた。一人暮らしでもコーヒーはかかせない存在だった。友達が来たらまずは挨拶がわりにコーヒーをいれた。会社では大きい袋のレギュラーコーヒーと一人分のドリッパーを持参した。コーヒーの残り香を給湯室に漂わせ、自分のデスクにもどった。 コーヒーミルでゴリゴリと豆をひく挽きたてのコーヒー。頭の片隅でなんどもあこがれていたけれど、コーヒーは嗜好品だしこだわりだしたらきりがない。「そこまで本格的にやらなくてもいいかな」なんて考えたりして。夜空に散らばるちいさな星のような金平糖、カタチを崩すのがもったいない端正