北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 梅本研究室 Japan Advanced Institute of Science and Technology. School of Knowledge Science, Umemoto Lab. 1.はじめに 1990年代は、企業の競争優位の源泉としての知識への関心が、世界中で著しく高まった10年であった。アメリカのコンファレンス・ボードの調査によれば、現在、世界の多国籍大企業の80パーセントが、何らかの形でナレッジ・マネジメントのプロジェクトを実施しているそうである。 最近、ナレッジ・マネジメントは、このままでも通じるようになってきたが、日本語としては「知識管理」と「知識経営」の二つの訳が可能である。前者が、単なる既存の知識の管理を意味しているのに対して、野中・紺野 [野中99] によって人口に膾炙し始めた後者は、前者のレベルを超えて、「知
2007年に訪れる人口の波は、労働力の減少というチャネルを通じて日本の潜在的な成長力にも少なからず影響を与える可能性がある。第1節で述べたように、労働力が減少していく中で一人当たり所得を維持していくためには技術革新による生産性の向上が不可欠である。また、人口要因が国内マーケットを縮小させていく中で、各企業は付加価値の高い技術創造により競争力を伸ばしていくことが求められる。 本節では、まず、企業の認識する競争力の変化やその背景を概観した後、競争力の源泉となる我が国企業のイノベーション活動の実態やこれを促す要因、イノベーション活動が企業の生産性に与える影響等について検証する。その中で、我が国は研究開発投資が高いにも関わらずそれに見合った生産性が確保されていないという見方に関連して、企業のイノベーション活動、ひいては生産性の向上を促すのは必ずしも研究開発投資の多寡ではなく、製造現場等での創意工夫
野中郁次郎氏は、経営学の立場から組織の知識創造理論を構築し、経営学の新しいパラダイムを世界に発信し ている組織論・経営戦略論の第一人者だ。氏の「SECIモデル」は今も進化している。 最新のSECIモデルに接した塾生からは「目から鱗が落ちた」という声が続出した。 コーディネーターの米倉誠一郎先生が「知の神様、心の師」と仰ぐ野中氏は 「俺たちヤングリサーチャーは〜」と熱く語る永遠の挑戦者でもある。 ■情報処理から知識創造へ マネジメントをナレッジ(知)で切ると何が見えてくるか。これが私がずっと取り組んできたテーマである。 しかしながら、最初は情報処理(インフォメーションプロセス)理論の全盛期。企業や人間を情報処理のマシンと捉え、組織は情報処理に限界のある人間をマネジメントするためにある、とするマネジメントセオリーに心服していた。この理論では、マーケットの多様性、情報処理の負荷に対してもっと
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