2022年1月2日のブックマーク (1件)

  • キセキに、最後のお願いを。

    逃げるか。控えるか。そもそもゲートを出られるか。 なるべく心に波風立てることなく、上機嫌で走ってほしい。仮にゲートを出られずとも、どうか鼻歌でも歌いながら、最後の力を存分に貯めておいてほしい。 そんな人間たちのささやかなお願いを容赦なく薙ぎ倒し、勢いそのままに突き抜ける竜巻のようなレースをするのがキセキだった。 2020年の春、厄介な疫病が流行って、私たちは競馬場やWINSに行けなくなった。それぞれの場所で競馬を見ていた。テレビの向こう、観客なき阪神大賞典にキセキがいた。断然の1番人気だった。 ゲートが開く。飛び出した馬群を追って画面が振り切れる瞬間、閉店間近に「まだやってる?」と暖簾の隙間から顔を出す常連客みたいに、画面の見切れるすれすれからひょっこりキセキが顔を出した。疫病に怯える私たちの退屈を切り裂く、大出遅れであった。おそらく鞍上の川田さんはそれどころではなかろう。大きく外に膨らせ

    キセキに、最後のお願いを。