すでに市民権を得た「アスペルガー」という言葉だが、実際のところそれが何を指すのか、正確な定義を踏まえて理解している人は数少ない。 ウェブで見かける際に使われる俗語「アスペ」と、本書の指す学術的な「アスペルガー症候群」はまったく異なるものだ。前者は人付き合いの苦手な人間に向けて気軽に使われるものだが、後者はなにぶんいろいろとややこしい定義がある(本書ではわかりやすくその概念を説明している)。本書はその、アスペルガー症候群の特性と犯罪率の関係について、真正面から改めて捉えなおしていく。 アスペルガー症候群という言葉が定着したのは、豊川市主婦殺人事件がきっかけだろう。実は、われわれの記憶に強く残っている有名事件(酒鬼薔薇聖斗事件、西鉄バスジャック事件、大阪姉妹殺害事件など)は、アスペルガー症候群、もしくは、それに准じる精神鑑定や診断がでている。 アスペルガー症候群と犯罪の関連性が囁かれるなか、専