「分析美学」とは、分析哲学に対応する仕方で主として英語圏においてこの半世紀ほど展開してきた新潮流の美学であるが、これまで日本において十分議論の対象とされてきたとはいえない。本書は、分析系の理論を駆使して日本の美学研究を牽引してきた西村清和自身が編纂し、主に若い研究者に声をかけて翻訳したもので、分析美学の発展において時代を画したと目される九本の論文が大きく四つの主題の下に収められている。 第一章は芸術の定義をめぐる論文二本からなる。さまざまなイズムの提唱された二〇世紀は、従来の芸術の定義を逸脱する作品を次々に生み出し、そのために「なぜこれが芸術なのか」という(以前にはありえなかった)問いがしばしば提起された。アーサー・ダントーの論文「アートワールド」は、芸術作品をその他のものから区別するのは知覚的特徴ではなく「芸術のある特定の理論」「芸術の歴史についての知識」であるという画期的な命題を提起す
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