著者:松本 雅彦出版社:みすず書房装丁:単行本(232ページ)発売日:2015-09-19 ISBN-10:4622079194 ISBN-13:978-4622079194 精神病理学の前途を開く泰斗の遺産先般惜しくも物故した精神病理学の泰斗による、わが国の戦後精神医学史の貴重な回顧である。私立精神科病院に長く勤務し、在野の期間が長かった著者の個人史は、アカデミズムの内側から見た精神医学史よりもはるかにリアルで生々しい。 戦後の半世紀は、日本の精神医学史においても激動の時代であった。そもそも私宅監置、すなわち「座敷牢(ろう)」が禁止されたのがようやく1950年である。まだ治安目的の色彩が濃い精神衛生法の下、60年代には私立の精神科病院が国の援助を得て激増した。精神科病床数30万床以上というスキャンダラスな数字がなかなか減らせないのは、この時期に確立された収容主義による。若き日の著者もそう