おそらく技術屋なのだと思う。 10年ぶりにパ・リーグを制覇した西武のホームランアーチスト中村剛也のことだ。 「一番大事なのは身体ですかね。身体が動けば、技術も心も安定すると思っています」 朴訥とした語り口は昔から変わらないが、彼の懐になかなか入っていけないのは、他人が簡単に踏みこめない深い野球観があるからだろう。 その昔、中村の恩師である大阪桐蔭の西谷浩一監督に「アーチスト論」を語ってもらったことがある。当時最大の注目を集めていた中田翔(日本ハム)を中心に、大阪桐蔭OBの関係性を解説してもらったのだ。 「ボールを飛ばすという意味でのパワーだったら中田が一番です。でも、技術は断然(中村)剛也です。ああいう体型しているから力だけに思われますけど、剛也の技術は相当に高かったですよ。中学時代から変化球を狙って打ちに行っていましたからね。 分かりやすく言うと、例えば中田は相手投手の力に対して力でまと