4.自由モノイド 圏論では、普遍性という概念はとても大切である。普遍性は、その言葉が示すように、数学の多くの分野で共通する性質を示したものである。前の記事で説明した極限と余極限も広い分野での共通の性質であるため、圏論での重要な普遍性の一つとなっている。ここでは、普遍性のさらなる例として自由モノイドを説明する。 4.1 自由モノイドの定義 加算や乗算などの二項演算子を用いて計算されるものはモノイドと呼ばれる。モノイドについても普遍性を考えることができる。それは自由モノイドと呼ばれるものだ。これを説明するために、モノイドについて、まずは、集合論での定理から始めてみよう。 1)集合論での定義 集合論でのモノイドは、ある集合\(M\)に対して、 1) 二項演算子\(\mu\)が存在し、\(\mu : M \times M \rightarrow M\)である。 2) 単位律が成り立つ。即ち、単位元