参院予算委員会前に安倍晋三首相(当時)と談笑する黒田東彦日銀総裁(左)。10年に及ぶ異次元緩和はアベノミクスを支えたが、物価安定目標は達成できなかった=2013年5月8日、木葉健二撮影 日銀の黒田東彦総裁が8日に退任する。歴代最長となる10年の任期の間、「異次元」とも称された大規模な金融緩和政策を続けたものの、日本経済を成長軌道に乗せるには至らなかった。黒田氏が示したのは金融政策は万能の「魔法」ではないという現実だ。そして、政治情勢などによっては国の将来を危機に導きかねないという教訓だ。 2013年1月、政府と日銀は安倍晋三首相(当時)の主導で、デフレ(物価下落)状況からの脱却を目指し、物価上昇率が前年比2%となる状況を安定的に実現する「物価安定目標」を明記した共同声明を発表した。これが「実験」の始まりだった。