著者の布施英利先生が行う絵画教室はとてもシンプルだ。絵筆を置いて、自然へと繰り出す。そして自分のはらわたが疼くのを確認したら、素直に絵に描いて表現しよう。「そんなに簡単に言われても」、と困るかもしれないが、自分を表現するには、自然を目の前にして、自分の中で何が起こっているのかを理解しなければならない。 本書は2000年10月に『絵筆のいらない絵画教室』として刊行されたものが文庫化されたものだ。著者が養老孟司教授や三木成夫教授のもとで学んだ美術解剖学をベースに、人の身体・心がどのように進化してきたのか、その過程で絵を描くのは何を意味するのか、そしてなぜ自然が必要なのかを、言葉を噛み砕き、丁寧に教えてくれる。 美術解剖学とは、どのような学問なのだろう。それは古代ギリシャやエジプトまで遡るほど古い歴史がある。作品として花を咲かせたのはルネサンス期、代表画家はレオナルド・ダ・ヴィンチ。布施先生曰く
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