佐々木:今日は俗っぽく入りますけど、例えば魚屋のおじさんに自分が紹介される時、どういう肩書きで行きます? やなぎ:まあ、美術作家ですね。 佐々木:写真家じゃなくて? やなぎ:フォトグラファーだと思ったことは一度もないので。私はもともと京都芸大の工芸科に入って、学部の四回生ぐらいまでは着物や屏風とかを型友禅の手法で制作してました。それがすごく好きだったんですよ。ただ、四回生ごろからだんだんと苦しくなってきて。 佐々木:なぜ? やなぎ:工芸というのは、一つのプロセスも落とさずに失敗しないように最後まで仕上げるという作業です。作業途中で方向性を変えるとか、悩んでちょっと手を止めるとかということは、特に染色は絶対許されない。その縛りがだんだん鬱陶しくなってきて、ドロップアウトしちゃったんです。今でも工芸が好きなんですよ。でも好きだからこそ、さよならしたというところもあります。 佐々木:卒業制作は工