全体に関する感想 2020年8月29日に開催された「精神医療と社会学」読書会*1に参加して『統治の抗争史』を読む機会を得た。 約500頁に渡って詳細な議論が繰り広げられる本書を一人で読む自信はなかったので、他の参加者の方々と読むことができたのは幸いであった。 フーコーを通じて近代思想史を読みなおすと、思想家にとって著述するとはこのような概念闘争に参入することにほかならないことを理解できる。本書で取り上げた多くの思想家において、一つの語に複数の意味が込められ、あるいは錯綜したやり方で用例が混在するのは、こうしたことの霊障である。(484頁) 「おわりに」で著者は以上のように述べている。本書で描かれたのは、知への意志に駆り立てられた思想家たちの概念闘争の歴史であるともいえよう。その闘争の中で、或る思想や概念は生き残り、他の思想や概念たちは挫折してゆく。とはいえ、それが闘争の歴史である以上、それ