それが分かった気がする。なぜ吉野山(奈良県吉野町)のサクラが日本一と言われるのか。答えは簡単で、目に入るサクラの95%以上が日本古来のヤマザクラ(山桜)だからだろう。 ご存じの通り、私たちがふつう花見をするのはソメイヨシノ(染井吉野)と呼ばれる園芸品の桜。各地の花見名所やお山のてっぺんによく植えられているのも、ソメイヨシノが圧倒的に多い。それに対し、日本でもともと見られる野生の桜はヤマザクラがメインで、花が開くと同時に赤い若葉が出ることが違いだ。この赤色が、吉野の景観に大きなインパクトを与えている。たとえば、花が散った後は赤い若葉だけが残り、木全体が赤くなってまるで紅葉のように見える。また、若葉の色には個体差があり、緑色っぽいもの、茶色っぽいものなどが入り混じるので、様々な色の表情を見せてくれる。“クローン桜”のソメイヨシノにはない多様性だ。 現実には、吉野山にもソメイヨシノがちょこちょこ